米国で広がる「芝生にさよなら」 環境保護に一役
米国で、自宅の庭や公共スペースの芝生を在来植物に植え替える動きが広がり始めた。
ユタ州では2021年、芝生から在来植物への植え替えを支援する「ユタ・ポリネーター生息地プログラム」を立ち上げた。
農業や自然環境の維持に欠かせない、花粉を媒介する蜂や蝶などの生き物(ポリネーター)が集まる植物を植えた庭を増やす目的。参加を希望した州民に在来植物の種や苗を提供して自宅の庭に植えてもらい、その後3年間にわたり育成状況について報告してもらう。
プログラムは初年度から募集枠を大幅に上回る応募があり、当初5年間だった計画を無期限継続で検討し始めた。
各地で深刻化する水不足問題も、米国人の芝生ばなれを後押しするもう一つの理由だ。
近年、深刻な干ばつに直面してきたカリフォルニア州では、水の管理当局が芝生の撤去面積に応じて補償金を支払う「買い取り」制度を運営。
ネバダ州では21年、全米に先駆けて「鑑賞目的」の芝生の全面禁止に踏み切った。主要都市ラスベガス周辺だけでも芝生の撤去により水の消費量を15%程度削減できるという。
デラウェア大学で野生生態学を教えるタラミー教授の著書でも「自然の最大の頼みの綱」として、芝生から在来植物への植え替えを推奨。
新型コロナウイルスの流行も追い風となり、同教授は「自宅で孤立し、環境破壊で暗いニュースが多い中『自分でもできることがある』と著書のメッセージを前向きに受け止めた米国人が多かった」と庭造り転換への成功を分析する。
芝生のルーツはヨーロッパの貴族文化にあるとききます。
管理維持に膨大な人手や資金が必要な芝生は、長く富や権力の象徴とされてきましたが、その流れを汲んで、手入れの行き届いた芝生はアメリカンドリームの象徴になったそうです。
日本にも「隣の芝生は青い」という諺があるように、庭は誰の目にも留まり、自分たちの豊かさを誇示するにはうってつけの場所だったのでしょう。
しかし今、環境破壊や水不足など地球のSOSを感じ、多くのアメリカ人が自己満足の芝生を捨てて在来植物を植える流れにあると読み、とても感銘を受けました。
アメリカでは、庭を見ればその家庭がわかるというくらい庭が重要視されていて、庭が手入れされていない家は周辺の不動産価値を下げると非難されたり、地域によっては罰金の対象になったりもするそうです。
野草が咲き誇るポリネーター・ガーデンも見ようによっては雑草が生え放題のずぼらな庭に見え、知らない人から心ない言動を投げられることもあるのではと思います。
それでも地球のために、未来のためにポリネーター・ガーデンを選ぶことは、安易にはできない勇気が必要です。
見た目の美しさより、行動で魅せる美しさに気づける人間でありたいと感じた。