宵越しの金は持たない
メキシコではほとんどの企業が1カ月に2回、給料を支給する。理由は単純、そうしないと多くの人がもらったそばから使い切ってしまうからだ。そんなメキシコ人が心待ちにするのが、ディズニー映画「リメンバー・ミー」で有名になった11月1,2日の「死者の日」。ありったけのマリーゴールドで祭壇を飾り、死者の霊と共に派手に飲み歌う。市内の中心部を貫くレフォルマ通りには鉢植えのマリーゴールドがずらりと並んで売られ、街は夜まで華やかな雰囲気に包まれる。
11月のもう一つの楽しみが「エル・ブエン・フィン」と呼ばれる、数日に渡る大安売り。メキシコ版「ブラック・フライデー」ともいえるこのイベントに昨年参加登録した事業者は、企業家調整評議会(CCE)によると10万を超え、全国で1340億ペソ(約1兆1000億円)のお金が動いた。家電やパソコン、自動車、アパレルなど多くの商品が大幅に値引きされ、ローンの支払い条件も優遇。激安品を手に入れようという消費者は多く、高額商品を扱う店の前には早朝から行列ができるという。近年はオンラインショッピングも活況を呈している。
今年で13回目を迎えるブエン・フィンは、ただ安くモノを売るだけでは終わらない。終了後しばらくたつと、大判振る舞いな抽選会を政府が開催。当選者はクレジットやデビットカードで支払った金額の一部がチャラになる。官民一体で買い物を盛り上げる趣向がすっかり定着してきている。
この記事を読んだ最初の感想は、働いて安定した収入があるうちに貯金しておかないと、老後はどうなってしまうのかという心配でした。気になって調べたところメキシコ人の平均寿命は男性72才、女性は78才と決して若くはありません。
「宵越しの金はもたない」といえば聞こえはいいですが、実際はお金を計画的に使えないということで、それは決して美点ではないように私には思えました。それでも社会はその弱さを否定するでも直そうとするでもなく、受け入れた上で給与制度を柔軟に変えることで弱点に伴う問題を解決している。政府も、お金を使うのが得意な国民性を活かして年に1度のイベントを多いに盛り上げ、国を活性化しています。
デメリットを是正していくことも大切と理解しつつ、それを受け入れ上手にメリットに変えていく発想の転換、どんな状況も明るく受け入れる心の余裕。最初に感じたメキシコ人への心配はどこへやら、大変なときでも今を楽しく生きるメキシコ人から学ぶことは多そうだと感じた記事でした。