多様性について 本をめぐって党派が対立
日本経済新聞 2023年6月6日の記事より抜粋
「「アメリカ・バージニア州のスポットシルベニア郡で、「露骨な性描写が含まれている」として高校図書館から14の本が「禁書」にされた。対象となったのは、白人に憧れる黒人少女を描いたノーベル賞受賞作家の著書やLGBTQの黒人作家の自伝など。
米図書館協会によると、同州の学校や公立の図書館では昨年、182の本について35件の排除要求があった。アメリカ全体では1269件と、前年から倍増し過去最多。排除要求の中には数段落・数ページを見ただけで、実際に読みもしない意見も多いという。
この動きの中心にあるのは共和党保守派で、ときに赤裸々に描かれる部分を性的・暴力的だと主張し、人種や性的マイノリティー(少数派)に関わる本の排除を目指す。
一方、民主党リベラル派は人種や性の多様性を子供にも率直に伝えるべきだと反論。民主党支持者が多い同州アーリントンの公立図書館は、禁書になった本の作家を招いた講演会を開催。ドラァグクイーンたちが歌や踊りを交えて絵本を読む、子供たちに人気の読み聞かせ会も続けている。主にゲイである男性が華やかに女装するドラァグクイーンについても民主党は「過剰な性の強調で子供を混乱させる」と非難するが、共和党は「芸術表現であり、本質的に性的なものという認識は違う」として、ドラァグクイーンによる読み聞かせ会は子供たちに多様な考え方と寛容さを学ばせる場だと主張する。 子供にマイノリティーのあり方をどう教えるべきか、アメリカの二大政党による文化戦争は平行線だ。」
個人的な感想として、いくら図書館の本棚から排除しても、目にふれないよう規制をかけても、子供の、人間の知的探求心というのは抑えられるものではありません。むしろ隠されることで子供たちはそれが普通でないもの、よくないものと無意識に認識していってしまうのではないかと危惧しています。幼い頃から身近にあって当たり前、いろいろな人がいて普通と思える環境の方が、大人になってからの差別や偏見につながりにくいのではないかと考えます。
またアメリカは自由と権利の国とよく耳にしますが、だから何をしてもいいというのではなく、自由や権利の行使により生じた結果に対して厳しいほどに自己責任が追及される印象があります。 表現の自由のもと本を世に出した作者や出版社たちは、批判や非難に責任を負う覚悟で、なにを表現したかったのか。自分の価値観だけで考えるのではなく、相手に思いをはせる、そういう一歩を思い遣りというのだそうです。
もちろん、表現する側も受け取る側にできるだけ誤解や不快感を与えないようにする努力も必要だと思います。
たかが言葉、されど言葉。人の表現に対しては寛容に、自らの言葉に対しては厳格に、考えていきたいと感じた記事でした。