ロンドンの水守れるか 民営水道企業で絶えぬ問題

 

英国の首都ロンドンの民営水道会社、テムズ・ウオーターの信用低下に歯止めがかからない。

テムズと言えば、仏ヴェオリア、仏スエズと並び、世界の「水メジャー」と呼ばれることもある。サービスを提供している顧客の数は約1500万人にのぼり、英国の人口の4分の1近くを占める。水ビジネスをリードする存在という印象もあるが、実際は数多くの問題を抱えている。

例えば、河川への未処理の下水放出はこれまでも度々発覚してきた。他にも漏水や顧客への架空請求など、サービスにまつわるトラブルは後を絶たない。加えて今夏、英国を騒がせたのが同社の経営危機問題だった。

負債が140億ポンドにのぼっていたこともあり、後に条件付きで7億5000万ポンドの調達が決まり、騒動は一旦収まりをみせたが、問題が再燃する可能性は高い。同社が民営化したのは1989年。コスト削減や海外展開を進め、一時は民営化の成功例と評されることもあった。

一方で、民営化後に多くの株主のもとを渡り歩くことが、ひずみをもたらした。

良質なサービスを提供するためのインフラ整備が最優先事項だが、優先されたのは株主への配当の拠出だった。テムズの23年3月期の税引き前損益は、8260万ポンドの赤字と3期連続で赤字決算となるなど業績低迷に苦しむ。民営化したといえど経営の自由度は実際のところ高くないという。

現在は筆頭株主のカナダのOMERSが約32%を保有し、英国のUSSが約20%で続き、残りも中国のファンドなどが保有する。

公営か民営のどちらがいいかの議論はさておき、水道事業は生活の根幹を支える重要なインフラで、市民に不安を与えない運営を貫くのは最低限のラインだ。

 

私が今回この記事を選んだのは、日本でも同様の懸念のある事態が発生しているからです。

日本は現在、水道事業に関しては、管理は民間や行政法人に委託していますが、最終決定権者は国や地方自治体が担っております。

そのため施設維持や環境対策には、民間と違って利益でなく、必要かそうでないか?が第一となります。

しかし、水事業は維持費も高いため、東京都などは市町村の水道部門を廃止し、民間に完全委託する形を取り始めています。

一時期は、一括委託されている民間企業に都知事の特別秘書が抜擢されており問題になっていましたが、問題となるのはイギリスのように民間と公営では向いている対象が違いすぎる部分であると考えます。

公営は社会の福祉のために存在する非営利団体に対して、民間は営利団体ですので、利益確保のために水道代金の値上げや、施設への投資の減少などが懸念されています。

また、生活インフラになくてはならない施設のため、有事の際の官民連携や水の供給時の取り決めなど、生活に直結する最重要施設が、海外資本なども入る民間企業に委託されることに対し、不安や懸念の声が高いのは当然の反応だと思います。

コスト削減や持続可能な事業を運営と言って、生活基盤にまで民間の考えを入れていくことは、懸念も多く、また自治体や国への不信感にもつながりますので、慎重な検討と原則の再確認が必要だと感じました。