産総研の「ミドリムシ由来強力接着剤」 欧州廃車規制の需要に合致
ミドリムシ、理科の授業で誰もが一度は目にした微生物ですが、その特性は非常にユニークです。
植物のように光合成を行いながら、動物のように体内に栄養を蓄えることができ、
その結果、ビタミン・ミネラル・アミノ酸など約60種類の栄養素を備えています。
まさに「自然界のハイブリッド生物」とも言える存在であり、食品や医療、そして環境技術まで、幅広い分野で注目を集めています。
今回、産業技術総合研究所はミドリムシが細胞内に蓄積する「パラミロン」という高分子に着目し、これを原料とした新しいバイオ由来接着剤を開発しました。
厚さわずか0.05ミリのシートでありながら、さらに、約200度に加熱することで容易に分解できるという特性を併せ持っています。
産総研の試験では、アルミニウム板を接着した試験片で引張せん断強度が約30 MPaに達しており、従来のエポキシ系接着剤の20〜30 MPaレベルに匹敵していると報告されています。
この「強く、かつ分解可能な接着剤」という発想は、欧州連合が進める廃車リサイクル規制、いわゆるELV指令の要件にも合致しており、自動車業界を中心に高い関心を集めています。
従来の石油由来接着剤では成し得なかった“リサイクルと高性能の両立”を、自然由来の素材で実現した点に、大きな意義があると感じます。
私が所属する品質管理の立場から見れば、ここには二つの重要な示唆があります。
第一に、生物由来素材の品質変動をいかに制御するかという課題です。
天然素材は、培養環境や原料ロットによって特性が変化しやすく、安定した性能を保証するには、より高度なトレーサビリティと工程管理が求められます。
第二に、品質の定義そのものの拡張です。
これからの品質は、「強度」や「耐久性」だけでなく、「環境適合性」「リサイクル性」まで含めた総合的な価値として捉える必要があると考えます。
ミドリムシという小さな存在が、今や環境対応と産業技術をつなぐ架け橋となりつつあります。品管業務をする上で、こうした新しい技術革新に柔軟に対応し、「信頼性」と「持続可能性」を両立する品質の在り方を追求できることは何か、を考えさせられました。
