仕事は「苦役」ではない 働く喜びが会社を変える

米国の作家、ダニエル・ピンク氏は著書の「モチベーション3.0」で人のやる気を促すために何をすべきではないかについて興味深い実証実験を多数紹介し、貴重な教訓を引き出している。例えば数学の問題集を1ページ解くごとにお小遣いを与えるとする。

その子は短期間は一生懸命取り組むが、しばらくするとほぼ確実に数学への興味を失うという。

個々人の能力は過去の実績などである程度推測できても、実際のパフォーマンスは各人の「心の状態」に左右される。健康を損ねる人は責任感が強くまじめな一方で、失敗への恐怖心が強い。

上司や同僚の評価を過剰に気にする人も多いという。
「自分を殺してがむしゃらに働くのが美徳」という昭和的な仕事観を内面化している人がいまも大勢いるのだ。

丸井グループが10年越しで取り組むのが社員の「フロー率」の向上だ。

能力レベル(自分の強みや能力を自覚する度合い)と、挑戦レベル(新しいことにチャレンジする意欲)この2つのレベルを自己評価してもらい、一定の水準以上の人を「フロー人材」と定義。丸井グループはその比率を30年までに全社員の60%まで引き上げることを目標としている。

私も日々の業務の中で、上からの指示ではなく、意味や価値を見出して取り組む仕事の方が、集中力が高まり、結果として仕事の精度や成果に好影響を及ぼすと実感しています。このような深い集中状態は、心理学において「フロー」と呼ばれています。これは、時間の経過を忘れるほどに没頭し、内側からの意欲によって行動が駆動されている状態を指します。

研究によれば、フロー状態にある人間の脳は、ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が活性化され、注意力・判断力・創造性が著しく高まることが明らかになっています(Dietrich, 2004)。

この結果、業務上のエラーが減少し、作業の質が安定するという実務上の利点が示されています。

また、Google社が実施した「Project Aristotle」でも、チームメンバーが「仕事に意味を感じている」かどうかが、生産性や品質、顧客満足度に大きな影響を与えていることが明らかになっています。

単なる精神論ではなく、組織行動の科学的な知見として裏付けられています。

国内の製造業においても、パナソニックやトヨタの現場では、「内発的に動ける環境」の重要性が繰り返し語られています。

主体性が高い職場は不良率が低く、改善活動が自然に根付くという調査結果も存在し、私自身もこの考え方に深く共感しております。

私見ではありますが、仕事における「質の高さ」は、単なる技術的な熟練度やチェック体制の厳格さだけでなく、その人がどれだけ仕事に意義を感じ、内発的な意欲を持って取り組めているかに大きく左右されると考えています。

一人ひとりが、自らの役割に誇りと意味を見出し、真摯に業務と向き合うことで、結果として高い品質と信頼が築かれるのではないでしょうか。
今後もより良い仕事を追求していければと思っております。