紅海襲撃、世界の輸送能力2割減も インフレ再燃の恐れ
米東海岸主要港を出た商船の位置(赤点)と航跡(黄色)。複数の船がスエズ運河を避け、アフリカ南端に向かっている(LSEGデータを日経分析)
親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃が相次ぎ、紅海やスエズ運河の通航を避ける動きが広がっている。すでに少なくとも120隻のコンテナ船が迂回路を選択し、世界の海上輸送能力は2割減少するとの見方も浮上している。企業からは配送の遅れによる供給網混乱や、コスト増による物価への影響を懸念する声が上がっている。
海上コンテナは世界の物資輸送の3割を担い、金額ベースの輸送量は年間142兆円に上る。そのうち、およそ10%がスエズ運河を通過しているとされる。
12月に入ってニューヨークとジョージア州サバンナの2つの主要港に寄港した約300隻の位置データと航跡を可視化すると、大西洋を南下してアフリカ南端の喜望峰を目指す船が多数あることがわかる。多くはシンガポールなど東アジア方面に向かうコンテナ船だ。
11月に同じ港を利用した船の同月末時点での位置データでは、大西洋を横断して地中海や紅海に向かう船が多い。特に東アジアに向かう船の多くは距離が圧倒的に短いスエズ運河と紅海を利用していた。12月になって商船への攻撃が活発化し、航路の変更を余儀なくされているのが鮮明だ。
既に海運大手のデンマークのAPモラー・マースクや独ハパック・ロイド、仏CMA CGMなどが紅海の航行取りやめを決めている。121のコンテナ船が迂回航路を取り、160万個のコンテナが影響を受けている。
アジアから喜望峰経由での航海時間は、スエズ運河経由に比べ欧州行きで3〜4週間、米東海岸へは5日程度長くなる。復路にかかる時間も加味すると、船が海上に滞留する時間が大幅に増え、全体として輸送効率が低下する。
CMA CGMは運送料を40フィートコンテナで2000ドルから3倍超の6600ドルに引き上げた。
欧米とアジアを結ぶ船便全体で、一部の材料の入手が困難になる可能性もあるという。
船の業界では、船を作るオーダーをする人と、船を管理・運航する人が違うことはままありますが、今回のこの事態は、船を運航する人にとって大きな痛手となります。船を期日通りに安全に港に送り届けることを条件に、船の管理・運航を任されているので、情勢上仕方ないとはいえ船の運航を遅らせざるを得ないことは、今後の取引の上で非常にネックになってくるかと思われます。
また、航海が伸びると、船によっては定期メンテナンスであるドックの時期に影響が生まれます。最悪ドック期間をずらさないと行けなくなれば、違約金等も発生しますし、ドックに間に合わせるようにすると、普段よりも1航海少なくしないといけないかと思われます。
そうなってくると、就航船へのアフターフォローを担当している部署としては、ドック予定の不確かさなどから、在庫確保や出荷調整にいつも以上に細心の注意をしないといけないと再認識しました。