保育園入園時の就労証明書 手続き電子化撤回

出典:日本経済新聞 2023年10月16日(月) 日刊

子供を保育園に預ける必要があることを証明する『就労証明書』の提出手続きに関して、2023年10月に導入を予定していたデジタル化の取り組みの一部が見送られることとなりました。就労証明書に関する問題点は様々あり、まず、自治体ごとに証明書の形式が異なる点が挙げられます。

通常、就労証明書は保護者が勤務先の企業に記入してもらい、自治体に送ることが多いのですが、自治体ごとにその形式が異なっており、企業の担当者がその都度形式の異なる証明書の記入をすることとなります。そのため、証明書の記入に1週間以上かかることもあるそうです。そこで政府は行政デジタル化の一環として、証明書の様式をそろえたうえで電子化し、保護者やその勤務先が書類への記入をする手間を省き、勤務先から直接自治体にデータで送ることができる仕組みを検討していました。しかし、一部企業からは実務の手間が増えるといった反対意見が出たとのことです。企業から自治体に提出する方式にすれば、企業側に新たな提出責任が生じますし、自治体にとっては企業から送られてくるデータとは別で、保護者から送られてくるデータとの紐づけをする負担が新たに生じることになります。

自治体によってバラバラだった証明書様式への対応は「マイナポータル」を使った手続きに限り、9月から様式をそろえたとのことです。

 

行政が目指している方向性には賛同できるものの、準備が不十分なまま、強引に導入をしているのではないかという印象を受けました。

マイナンバーカードやマイナポータルを利用した手続き体制はこれで十分だと思っているのかなと疑問に思うことが多々あります。

手続きの電子化と聞けば、誰しもが場所や時間帯を選ばず、並ぶこともなく手続きができるといった便利になるイメージを持つのではないでしょうか。

私自身でも、マイナポータルから就労証明書の発行手続きを調べてみたのですが、マイナポータルを使って何をすることができるかがわかりにくく、ようやく見つけたと思えば、自治体に直接提出する必要がある申請書のフォーマットがダウンロードできるページに飛ばされるだけ。

書類を取りに行く手間は省けるかもしれませんが、ここまではマイナポータル、ここからは書類の提出と、逆に行政手続きがややこしくなる原因になるのではないでしょうか。

マイナンバーカード、マイナポータルともに、もっと利便性を追求したうえで導入することもできたのではないでしょうか。このまま中途半端な制度が改善されなければ、変更のたびに振り回される各自治体の職員の労力は増す一方になると考えます。自分の仕事においても混乱を招くことがないよう「関係者への根回しを忘れない」ことを意識しなければならないと感じた記事でした。